卒業式はいつから?
卒業式へ参加してきました。卒業生のスピーチに感動しました。

日本の卒業式文化の起源と変遷
そもそも、日本の卒業式はいつから始まったのでしょうか?
どのような歴史を経て、現在の形になったのでしょうか?
この記事では、日本の卒業式文化の起源と変遷について、以下の項目に沿って詳しく解説していきます。
- 日本の卒業式の起源
- 卒業式が一般的に行われるようになった時期と背景
- 昔の卒業式と現代の卒業式の違い
- 卒業式の歌
- 世界の卒業式と日本の卒業式
日本の卒業式の起源
日本の卒業式は、1872年(明治5年)の学制施行に伴い、各学年ごとに試験修了者に対して卒業証書を授与したのが始まりです 。
これは、世界的に見ても珍しい習慣で、各学校の修了ごとに式典を設けて祝うのは、日本と韓国だけに見られる文化です 。
当初は、年齢に関係なく入学し、半年ごとに進級試験を受けて進級するシステムで、進級=卒業という考え方でした。現代のように1年ごとの学年制や入学式は存在せず、卒業式も年2回行われていました。
その後、明治10年代(1870年代半ばから1880年代)になると、現在のような独立した儀式として定着していきます 。
1876年(明治9年)に陸軍戸山学校で行われた生徒卒業式が、記録に残る最初の卒業式とされています 。
1895年になると、文部省の指導により、1等級の標準修学期間が半年から1年へと変更されます。これは、就学率の上昇と学級編成が進んだことによるものです 。これに伴い、卒業式は年1回となり、現在のような形へと近づいていきました。
卒業式が一般的に行われるようになった時期と背景
卒業式が一般的に行われるようになったのは、明治20年代に小学校で卒業式が導入されてからと言えます 。
その背景には、1890年(明治23年)の教育勅語発布以降、儀式を通した道徳教育が重視されるようになったことが挙げられます 。卒業式は、子供たちに「ふさわしい感情や振る舞い」を教える場として位置づけられるようになりました。
また、当時の義務教育は6年間と短く、小学校卒業が人生の大きな分岐点であったことも、卒業式を特別な意味を持つものにしたと考えられます 。
昔の卒業式と現代の卒業式の違い
昔の卒業式と現代の卒業式を比較すると、服装や式典の内容に違いが見られます。
服装
- 昔: 男子は国民服や詰襟の学生服、女子は和服やセーラー服が一般的でした。
- 現代: 小学校では服装規定がない場合が多く、正装やカジュアルな服装など様々です。中学校・高校では制服、大学ではスーツや袴が一般的です 。
特に女子の服装は変化が大きく、近年では小学校の卒業式で袴を着用するケースが増えています 9。これは、少子化の影響で成人式での需要が減った着物業界が、新たなターゲットとして小学校の卒業式に注目したことが背景にあるようです 。
袴は、もともと男性の礼装として用いられていましたが、明治時代以降、女学生の制服として着用されるようになりました 。当時、袴は活動的な女性の象徴であり、社会進出を後押しする役割も担っていました。卒業式に袴を着用することは、こうした歴史的背景と、新たな門出に臨む女性たちの力強さを象徴していると言えるでしょう。
式典の内容
- 昔: 教育成果の発表という側面が強く、体操や弁論などが行われていました 6。
- 現代: 卒業証書授与、校長式辞、送辞、答辞、卒業の歌などが主な内容となっています。
現代の卒業式では、1950年代に斎藤喜博氏が提唱した「呼びかけ」を取り入れる学校が増えています 。これは、卒業生や在校生だけでなく、教師や保護者も参加する形式で、卒業式を全員で作り上げるというものです。「呼びかけ」の導入により、卒業式は単なる儀礼的な場ではなく、一人ひとりが参加し、感動を共有する場へと変化しました 。
世界の卒業式と日本の卒業式
「蛍の光」が象徴するように、日本の卒業式には、別れを惜しむ気持ちが色濃く反映されています。では、世界の卒業式はどのようなものなのでしょうか?
日本の卒業式と世界の卒業式を比較すると、以下のような違いや共通点があります。
項目 | 日本の卒業式 | 世界の卒業式(例:アメリカ、イギリス) |
服装 | 制服、スーツ、袴など | ガウン、角帽など |
雰囲気 | 厳粛、感動的 20 | 陽気、祝祭的 21 |
内容 | 卒業証書授与、式辞、送辞、答辞、卒業の歌など | 卒業証書授与、スピーチ、パフォーマンスなど |
時期 | 3月 | 5月~7月 |
共通点 | 教育課程の修了を祝い、新たな門出を祝う | 教育課程の修了を祝い、新たな門出を祝う |
アメリカの卒業式では、卒業生はガウンと角帽を着用します 。これは、日本の袴と同様に、卒業式における正装としての役割を担っています。興味深いのは、成績優秀者上位10名が特別なネクタイのようなものを身につけることです 。これは、学業における功績を称えるとともに、将来の活躍を期待する意味が込められています。
また、アメリカの卒業式では、式典の雰囲気も日本とは大きく異なります。卒業生は、ワンピースやスカーフ、モヒカンなど、個性的な服装で参加することもあります 。ある先生は、自分の卒業帽にスマイルマークをつけて個性を表現したそうです 。
イギリスの卒業式では、式典後に卒業生全員で帽子を空に投げる習慣があります 。これは、学業の成果を祝い、社会へと羽ばたいていく喜びを表現するものです。
これらのことから、日本の卒業式が厳粛で感動的な雰囲気であるのに対し、欧米の卒業式は、より祝祭的で個性を重視する傾向があると言えるでしょう。
まとめ
日本の卒業式は、明治初期に始まり、時代とともに変化を遂げながら、現在のような形になりました。
昔の卒業式は教育成果の発表という側面が強かったのに対し、現代では、感動的な演出や「呼びかけ」などを通して、卒業生と在校生、教師、保護者が一体感を共有する場となっています 。これは、日本の卒業式が、単なる学業の修了を意味するだけでなく、個人としての成長と、周囲の人々との絆を深める場へと進化してきたことを示しています。
卒業式で歌われる「仰げば尊し」や「蛍の光」は、それぞれアメリカの曲やスコットランド民謡を原曲としており 、日本の卒業式文化が海外の影響を受けながら独自に発展してきたことを示しています。
日本の卒業式は、集団への帰属意識や目上の人への敬意を重んじる文化を反映しているのに対し、欧米の卒業式は、個人の業績や自由な表現を重視する文化を反映していると言えるでしょう 。
卒業式は、子供たちにとって学校生活の締めくくりであり、新たな人生のスタートを切るための大切な節目です。それぞれの時代の変化を反映しながら、今後も日本の卒業式文化は受け継がれていくことでしょう。
そして、卒業式は、どのような形であれ、人生における大きな転換期を迎えることの重要性を、私たちに改めて認識させてくれる場でもあります。成長、仲間との絆、そして夢の実現に向けて歩み続けること。卒業式は、これらの大切さを未来へと繋いでいく、かけがえのない機会と言えるでしょう。