食品ロス?
日本と世界のフードロスに関するレポート
はじめに
食品ロスは、世界中で深刻な問題となっています。まだ食べられるにもかかわらず廃棄される食品は、食料資源の無駄遣いであるだけでなく、環境への負荷や経済的な損失にもつながります。本レポートでは、日本と世界のフードロスの現状、原因、影響、そして削減に向けた取り組みについて概観します。
世界のフードロスの現状
世界では、生産された食料のおよそ3分の1にあたる約13億トンが毎年失われるか、廃棄されています。これは、世界経済に年間約9400億ドルの損失をもたらすと推計されています。また、生産されながら食べられることのなかった食品は、世界の温室効果ガス排出量の最大10%を占めるとも言われています。これは、航空機による排出量(1.9%)、プラスチック生産量(3.8%)、石油採掘量(3.8%)を大きく上回る数値です。
2022年のデータによると、世界で消費者に提供された食品の19%が、小売、フードサービス、家庭レベルで廃棄されました。これは10億5000万トンに相当します。一方で、同年に飢餓に苦しむ人々の数は7億8300万人に達しており、食料の不均衡が浮き彫りになっています。
日本のフードロスの現状
日本の環境省の推計によると、2021年度の日本の食品ロス量は約523万トンでした。これは、国民一人あたり年間約41kgの食品を無駄にしている計算になります。このうち、家庭からの食品ロスは約244万トンを占めています。
農林水産省の別の推計では、年間約472万トンの食品ロスが発生しており、その約半分が家庭から、もう半分が事業活動(食品製造業、卸売業、小売業、外食産業など)から発生しています。外食産業においては、食品ロスの約8割が食べ残しによるものとされています。2022年には、日本全体で612万トンの食品廃棄物が発生しており、世界的に見ても食品廃棄の多い国の一つです。
フードロスの原因
フードロスは、食品の生産から消費までのあらゆる段階で発生します。
生産・製造段階:
- 規格外品の廃棄(形状やサイズが基準に満たない農作物など)
- 輸送中の温度管理不備や不適切な包装
- 需要予測の誤りによる過剰生産
- 製造工程での不良品や規格外品の発生
流通・小売段階:
- 賞味期限や消費期限の管理不備による廃棄
- 「見た目」や「鮮度」を重視するあまりの廃棄(わずかな傷や変色など)
- 過剰な在庫や品揃え
- 返品
外食産業:
- 調理済みの食品の過剰な仕込みや提供
- 食べ残し
- 宴会などでのキャンセル
家庭:
- 食材の買いすぎや使い残し
- 調理の失敗や食べ残し
- 野菜の皮など、本来食べられる部分の過剰な除去
- 賞味期限や消費期限の誤解や無理解
- 長期保存による品質劣化
フードロスの影響
フードロスは、以下のような様々な影響を及ぼします。
- 食料資源の浪費: 生産に費やされた水、土地、エネルギーなどの資源が無駄になります。
- 環境への負荷: 廃棄された食品は焼却処分される際に二酸化炭素などの温室効果ガスを排出し、地球温暖化を促進します。また、埋め立てられた食品はメタンガスを発生させます。
- 経済的な損失: 食品の購入費用だけでなく、廃棄にかかる処理費用も発生します。
- 倫理的な問題: 世界には飢餓に苦しむ人々がいる一方で、まだ食べられる食品が大量に廃棄されているという矛盾。
フードロス削減に向けた取り組み
日本と世界では、フードロス削減に向けて様々な取り組みが行われています。
日本:
- 政府の取り組み:
- 2019年に「食品ロスの削減の推進に関する法律」を施行し、国、地方公共団体、事業者、消費者の連携による食品ロス削減を推進しています。
- 2030年までに家庭系と事業系の食品ロスを2000年度比で半減させる目標を設定しています。
- 食品リサイクル法に基づき、食品廃棄物の飼料化や肥料化などのリサイクルを推進しています。
- 消費者に向けた啓発活動や、食品ロス削減に貢献する事業者の表彰などを行っています。
- 事業者の取り組み:
- 賞味期限の延長や表示方法の改善
- 需要予測の精度向上による過剰な在庫の削減
- 規格外品の販売や有効活用
- フードバンクへの寄付
- 「てまえどり」の推奨(消費期限の近い商品から購入する)
- 外食時の食べ残し削減の呼びかけや持ち帰り推奨
- 消費者の取り組み:
- 必要な分だけ購入する
- 食材を使い切るための工夫(レシピの活用、冷凍保存など)
- 賞味期限と消費期限の違いを理解する
- 外食時の食べ残しを減らす、持ち帰る
- フードシェアリングサービスの利用
世界:
- 国際連合の持続可能な開発目標(SDGs)のターゲット12.3において、2030年までに小売・消費レベルにおける世界全体の一人当たりの食料の廃棄を半減させ、生産・サプライチェーンにおける食料の損失を減少させることが掲げられています。
- 各国政府や国際機関によるフードロス削減キャンペーンや政策の実施
- 食品関連事業者によるサプライチェーンの最適化や技術革新
- フードバンクやフードレスキュー団体の活動
- 消費者への啓発活動や教育
日本は、2000年度と比較して食品ロスを31%削減するなど、政策とパートナーシップを通じて大きな成果を上げています。
まとめ
フードロスは、食料、環境、経済、倫理など多岐にわたる側面から解決すべき重要な課題です。日本も世界も、政府、事業者、そして消費者がそれぞれの立場で意識を高め、具体的な行動を起こすことで、持続可能な社会の実現に貢献していく必要があります。私たち一人ひとりの小さな心がけと行動が、大きな変化につながることを理解し、日々の生活の中で食品ロス削減を意識していくことが大切です。