AITRAS(アイトラス)?

AITRAS(アイトラス)?



AITRAS(アイトラス)は、ソフトバンクが開発したAIとRAN(無線アクセスネットワーク)を統合した次世代の通信インフラソリューションです。AIと5Gネットワークを同一のインフラで運用することで、低遅延で高品質な通信と、エッジAIによる高度な処理を両立させることを目指しています。

AITRASの主な特徴

  • AIとRANの統合: 従来のネットワークでは別々に運用されていたAIとRANの処理を、GPUベースの同一ハードウェア上で統合します。これにより、個別のハードウェアが不要になり、コスト削減とインフラリソースの効率化が期待されます。
  • 低遅延かつ高精度なAI処理: 基地局の近くでAI処理を行う「エッジAI」のメリットを最大限に活かし、低遅延で高度なAIアプリケーションの提供を可能にします。これにより、自動運転やロボット制御など、リアルタイム性が求められる用途での活用が期待されます。
  • キャリアグレードの品質: 大容量・高性能で、通信事業者(キャリア)が求める高い品質基準を満たす統合ソリューションとして設計されています。
  • 柔軟なリソース配分: AITRAS内の「オーケストレーター」と呼ばれる技術により、時間帯や環境、需要に応じて、通信(RAN)とAI処理のリソースを動的に切り替えることができます。例えば、夜間の空いたリソースをAIの学習用として活用することも可能になります。
  • 「NVIDIA AI Enterprise」の活用: 大規模言語モデル(LLM)の開発・展開を容易にするソフトウェアプラットフォームである「NVIDIA AI Enterprise」が実装されており、企業が自社でAIアプリケーションを開発・展開しやすい環境を提供します。
  • コスト削減とインフラ効率化: AIとRANのワークロードを統合することで、投資および運用コストの削減が見込まれます。

AITRASがもたらすメリットとユースケース

  • 通信品質の向上: AIによる基地局の最適化や複数セル間の協調制御により、電波干渉の抑制や通信品質の向上が期待されます。多数の端末が同時に接続しても、安定した高速通信が可能です。
  • 自動運転: 交通理解マルチモーダルAIにより、死角にいる歩行者などのリスクを瞬時に予測し、自動運転車が一時停止するといった安全な走行をサポートします。
  • ロボット制御: 低遅延なAI処理により、ロボット犬による不審者追跡など、リアルタイムな状況判断と制御が求められる用途での活用が進められています。LLMを活用することで、人間の言葉でロボットに指示を出すことも可能になります。
  • スマートファクトリー: 工場内の設備情報やカメラ映像、センサーデータを参照できる高度なAIシステムを構築し、情報漏えいリスクを最小限に抑えながら、工場内の生産性向上や安全管理に貢献します。
  • 新たなAIアプリケーションの開発: AITRASのプラットフォーム上で、新たなAIアプリケーションを開発し、多様なユースケースの創出に向けた検証が進められています。

導入状況・今後の展開

AITRASは現在、神奈川県にある慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス(SFC)に評価環境が構築され、運用されています。また、海外展開も視野に入れており、米国カリフォルニア州のNVIDIA本社ビル内にも導入され、エッジAI開発が加速しています。

ソフトバンクは、AITRASを自社の商用ネットワークに導入するほか、国内外の通信事業者への提供も目指しています。2025年度には一部法人顧客の専用網となるプライベート5Gに展開するミニマクロ局としてサービスを開始する予定です。

AITRASは、AIと通信が融合する次世代社会インフラの実現に向けたソフトバンクの重要な取り組みであり、今後の展開が注目されます。