「フィジカルAI」および「エンボディドAI」?

「フィジカルAI」および「エンボディドAI」? 仕分けしてますね。


「フィジカルAI」と「エンボディドAI」について、比較表と詳細な説明を作成します。

フィジカルAI vs エンボディドAI 比較表

比較項目フィジカルAI (Physical AI)エンボディドAI (Embodied AI)
主な焦点/定義物理的な環境での操作やタスク遂行物理的な「身体性」を持つAI
「身体」の有無/重要性物理的な身体(ロボット、デバイスなど)を持つことが前提物理的な身体を持つことが定義上不可欠
目的/目指すこと現実世界での物理的なタスクの実行、自動化身体を通じた現実世界の理解、経験からの学習、人間のような柔軟なインタラクション
必要とされる能力認識(センサー)、判断、物理的な行動(アクチュエーター)上記に加え、身体感覚(触覚、力覚)、身体の制御、環境との相互作用を通じた学習
応用分野産業用ロボット、自動運転、ドローン、スマートデバイスなどヒューマノイドロボット、介護ロボット、サービスロボット、より高度な自動運転など
関係性エンボディドAIはフィジカルAIの一種(またはより特化した概念)と見なされることが多いフィジカルAIの実現において、身体性が特に強調された概念

説明

フィジカルAI (Physical AI)

フィジカルAIは、その名の通り「物理的な(Physical)」世界で機能するAIシステム全般を指す、比較的広範な概念です。これは、センサーを通じて現実世界の情報を取得し、その情報を基に推論や判断を行い、最終的にアクチュエーター(モーターやロボットアームなど)を介して物理的な行動を起こすAIを指します。

重要なのは、フィジカルAIがデジタル空間だけでなく、現実世界に直接影響を与える能力を持つ点です。例えば、工場で製品を組み立てる産業用ロボット、自動で走行する自動車、特定のエリアを監視するドローンなどは、フィジカルAIの応用例と言えます。これらのシステムは、特定のタスクを実行するために物理的な身体を持っていますが、「身体を持つこと自体がAIの知能にどう影響するか」という側面に必ずしも焦点が当てられているわけではありません。主な関心は、「いかに効率的かつ正確に物理的なタスクを遂行するか」にあります。

エンボディドAI (Embodied AI)

一方、エンボディドAIは、「身体性(Embodiment)」をより強く意識したAIの概念です。AIが単なるソフトウェアやアルゴリズムとして存在するのではなく、ロボットなどの物理的な身体と一体となって現実世界に存在し、活動することを定義の核としています。

エンボディドAIにおいて「身体」は単なる作業ツールではなく、AIが世界を認識し、学習し、理解するための重要な要素と見なされます。人間が五感を通じて環境を感知し、身体を動かす経験から世界を学ぶように、エンボディドAIも物理的な身体を通じて得られる多様な感覚情報(視覚、聴覚、触覚、力覚など)や、自身の身体を制御し環境と相互作用する経験を通じて、より深く世界を理解し、知能を発達させると考えられています。

これにより、エンボディドAIは、あらかじめプログラムされたタスクだけでなく、予期せぬ状況に対応したり、未知の環境に適応したり、人間とより自然にコミュニケーションをとったりする能力を獲得することが期待されます。ヒューマノイドロボットのように、人間と同じような形状の身体を持つことで、人間が生活する環境に自然に溶け込み、多様な作業をこなすことが究極的な目標の一つとされています。

関係性

フィジカルAIとエンボディドAIは密接に関連しており、しばしば区別なく使われることもあります。しかし、多くの文脈では、エンボディドAIはフィジカルAIのより特化された、あるいは先進的な形態と見なされています。つまり、「身体を持って物理世界で活動するAI」という点でフィジカルAIに含まれますが、エンボディドAIは特に「身体を持つことによる知能や学習能力への影響」に焦点を当てている点が異なります。

フィジカルAIが「物理的な作業の実行」を重視するのに対し、エンボディドAIは「身体を通じた世界の理解と知能の獲得」をより重視していると言えるでしょう。近年の大規模言語モデルの進化を背景に、AIに現実世界での「身体」を与え、テキスト情報だけでは得られない知識やスキルを習得させようという流れの中で、エンボディドAIという言葉が特に注目されています。

NVIDIAなどが注力しているのも、GPUによるAI計算能力と、Isaacのようなシミュレーション環境、そしてProject GR00TやCosmosといったモデル開発を組み合わせることで、まさにこの「身体を持つAIがいかに知的に物理世界で活動するか」というエンボディドAIの実現にあります。


フィジカルAI/エンボディドAI分野の主要な企業を表にまとめます。

企業名分類主な取り組み・強み注目のプロジェクト/製品連携・投資先(一部)
NVIDIA半導体/PF高性能GPU、AI開発プラットフォーム、シミュレーション技術Isaac Platform (Isaac Sim), Project GR00T, CosmosFigure AI, Agility Roboticsなど多数
Google巨大IT企業AIモデル開発、身体性推論、シミュレーションGemini Robotics, WaymoApptronik社など
Microsoft巨大IT企業AI研究、クラウド基盤、スタートアップ連携Sanctuary AIとの提携(汎用ロボットAI)、Figure AIへの投資Sanctuary AI, Figure AI
Amazon巨大IT企業物流での実運用、ロボット技術、AIモデルAmazon Robotics, Physical AI foundation models, Conversational RoboticsAgility Roboticsなど
Meta巨大IT企業AI研究、シミュレーション環境、VR/AR連携Habitat
Figure AIロボット専門企業人間型ロボット開発Figure 01Microsoft, OpenAI, NVIDIA, Amazon (J. Bezos)
Boston Dynamicsロボット専門企業高い運動性能を持つロボット開発Atlas, Spot
Agility Roboticsロボット専門企業二足歩行ロボット開発(物流向け)DigitAmazonなど
Sanctuary AIロボット専門企業汎用人型ロボット、AIプラットフォームPhoenix, CarbonMicrosoft
FANUCロボット専門企業産業用ロボット(AI連携)AI機能搭載ロボット
ABBロボット専門企業産業用ロボット(AI連携)AI機能搭載ロボット
KUKAロボット専門企業産業用ロボット(AI連携)AI機能搭載ロボット

※ 上記は主要な企業の一部であり、この分野には他にも多数の企業や研究機関が参画しています。

※ 連携・投資先は代表的なもののみ記載しています。

このように、巨大IT企業はAIモデルやプラットフォームといった「頭脳」の部分と、ロボット専門企業が開発する「身体」の部分が組み合わさることで、フィジカルAI/エンボディドAIは進化しています。NVIDIAはGPUと開発環境で多くのプレイヤーを支える中心的な存在となっています。